元水泳コーチのスイミングのハナシ

スイミングスクールで26年働いた元水泳コーチのお話です

スイミングスクールで子どもが合格しなくてイライラするママたちへ

スイミングスクールにもよりますが、子どもたちは1~2ヶ月ごとに進級テストを受けます。

保護者にすれば毎回合格してくれればうれしいものですが、当然ずっと不合格しないわけにはいかず、いつかは不合格になるものです。

スイミングスクールによって進級基準には違いがあり、順番や内容も違いますが、一般的に進級基準の中で、このような泳ぎが合格しにくいといわれます。

  • クロール25m完泳
  • 平泳ぎのキック
  • バタフライの完成

もちろんこれは一例であり、その子にとって苦手なことがあれば、これ以外でもなかなか合格できないことがあります。

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不合格が続くと・・・

子どもが練習をがんばっていて、毎回進級テストを受けているのに合格しない、1度や2度の不合格ならまだしも、3回4回、半年や1年も不合格が続けば、見ているだけで何も出来ない保護者はイライラしてきます。

最初は我が子の能力が低いからと思えても、半年や1年も不合格が続けば、我が子の能力うんぬんではなく、コーチの指導能力が低いからではないかと思っても仕方がありません。

不合格が続くということは、また同じ練習を繰り返すということであり、その状況に対して保護者は、お金の無駄ではないかと考えるようになります。

そして保護者だけでなく、子どもは子どもでやる気や自信を失くしたり、最悪の場合プールに行くのがイヤがって、スイミングスクールを辞めたいと言いだすこともあるでしょう。

不合格が続くとロクなことがありません。

保護者としてはコーチに対して「何とかしてよ!」と思うことでしょう。

そこでちょっと長くなりますが、スイミングスクールは、このことについてどう考えているのかを書いていきます。

特に、もしかしてわざと不合格にしているんじゃないか?と思われる保護者は是非読んでみてください。

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スイミングスクールの方針

進級テストの合否判定の基準は、スイミングスクールによって大きく変わります。

  • ある程度泳げていればどんどん合格させる
  • キッチリ泳げていないとなかなか合格させない

なぜ、このような正反対の差が生まれるかというと、スイミングスクールの考え方が違うからです。

<どんどん合格させるスイミングスクール>

子どもも保護者も合格すれば嬉しいですし、水泳が嫌でスイミングスクールを辞めることはありません。

この方針のスイミングスクールは、ある程度出来れば合格にして、水泳を楽しめるように考えています。もちろん全く出来ない場合は不合格になりますが、合格することの方が多いでしょう。

水泳を続けていくと、あるレベルからタイムで合否を決めるようになります。そのレベルまでは泳ぎのフォームや距離で合否が決まっていましたが、速いか遅いかで決るようになるわけです。

当然、ここまでどんどん合格していた子どもも、タイムとなると合否が数字で判断されるので、不合格になることが出てきます。

つまり、どんどん合格させるスイミングスクールは、最初はスイスイ進んで後が大変になるわけです。

<なかなか合格させないスイミングスクール>

こちらの考え方は、基礎ができなければ、それ以上難しいことはできないという考え方です。

ですので、合否の判断基準が厳しく、姿勢やキックといった基本的なことでも、ちょっと肘が曲がっていたり、膝の曲がりが大きいというだけで不合格になります。

その考え方は徹底されていて、「ケノビキックで5m」という進級テストでも、長ければ1年間不合格というスイミングスクールもあると聞きます。

保護者としては不合格が続いてイライラしますが、泳力が上がり進級テストがタイムで判断されるようになったときに、しっかりとした泳ぎが出来ているので、タイムも上がりやすくなり、合格する可能性が高くなります。

つまり、なかなか合格させないスイミングスクールは、最初は大変ですが後がスイスイ進めるわけです。

 

アナタならどちらを選びますか?

繰り返しますが、子どもが合格していれば保護者はイライラしないはずです。

イライラするのは不合格だからです。

つまり、どんどん合格するスイミングスクールだと、イライラしなくて済みますが、子どものレベルが上がってタイムが基準になったときに苦労します。

逆に、なかなか合格しないスイミングスクールはイライラしますが、子どもがタイムを計るようになる頃には、基本的なフォームは完成していることが多くなります。

2つを比べたときに、保護者がイライラしないのはどんどん合格する方です。

しかし、それが子どもにとってどうなのか、考える必要があります。

そしてどちらも間違いではありません。指導には正解がないということです。

アナタならどちらを選びますか?

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長い目で見てみませんか?

子どもが合格しなくてイライラするのは十分理解できます。

何ヶ月も同じ練習ばかりで、お金の無駄とも思えるでしょう。

子どもが合格しなくてイライラしている保護者が、イライラしなくなる方法は、子どもが合格するだけです。

コーチや責任者にクレームを連発して、無理くり子どもを合格させることも出来ますが、それで子どもが上手くなるかどうかは別です。

どんなに指導の上手いコーチでも、毎回全員を合格させることは出来ません。

ですが本当に指導の上手いコーチは、子どもの練習をしているときに、合格までにどれくらい時間がかかるかがわかります。

1~2回合格できなくても、諦めずにじっくり合格への道のりを探ります。

保護者としては手が出せなくてイライラしますが、ここはコーチに任せてしまって、長い目で見ませんか?

子どもがスイミングスクールに通い始めた頃には、ひとりでプールに入って溺れなければそれでよかったのに、進級テストを受けるようになって不合格が重なるとイライラが始まるわけです。

イライラしそうになったら、通い始めたときのことを思い出して、その頃に比べたら進歩したと思えるようにしてみてください。

大変だと思いますが、がんばってくださいね。

 

~追記(2019.2.3)~

この記事を書いて2年程が経過しましたが、それでも多くの方の読まれているようで、いくつかコメントを頂きました。本当にありがとうございます。

コメントを頂くということは、よほどのエネルギーがあってのことだと思いますので、それに応えられるように、少し追記しておきます。

 

まず、私の文章力の低さも相まって、読まれた方に不快な思いをさせたかもしれませんが、自分が書きたかったことは、以下の2つの場合、どちらを選びますか?ということです。

  • スイスイ合格するけれど、そんなに上手くならない
  • なかなか合格しないけれど、ちゃんと上手くなる

不合格が続くのはイライラするけれど、子どもがちゃんと上手くなる方がいいのでは?ということであり、指導力の無さを棚に上げて、保護者はイライラせず我慢するべき、というわけではございません。

ということなので、もし、どうしても納得がいかなければ、そのスイミングスクールをさっさと退会した方がいいでしょう。住んでいる場所にもよりますが、他に通えるスイミングスクールがあるのであれば、とっととそちらに移籍して、納得できる指導を受けるほうが、イライラもしなくて済みます。

 

私はスイミングスクールでコーチをやっていますが、【進級テストの結果はコーチの指導能力の鏡】と考えており、【子どもが合格しないのは、自分の指導力が低いせい】だと考えております。(信じてもらえるかどうかはわかりませんが・・・)

ただ、長年この仕事をやってきて、スイミングスクールの内情(及び台所事情)を知っている人間としては、残念ながら指導力の高いコーチを揃えることは、かなり難しいことです。

その理由は長くなるので割愛しますが、元選手などの水泳経験者に2~3ヶ月研修しただけで、一人前のコーチとしてプールに立たせているのが、スイミング産業の現状です。

もちろんそうじゃないスイミングスクールもあって、その場合はこの記事にコメントを書くようなことはありませんので、ここにコメントを書かれるようなエネルギーをお持ちの方は、そういうスイミングスクールに通っておられるということでしょう。

残念ながら、そういうスイミングスクールでは、いくら保護者が意見やクレームを伝えても、そう簡単には指導力が上がることはありませんので、前述したように退会もしくは移籍をオススメする。というわけです。

 

最後に、各コメントに、少しだけご意見を書かせていただきます。

全く違います。合格しないからイライラするのではありません。テストの大事な日に隣の子からずっとちょっかいを出され続け、唾を掛けられ続け、口から水を吹き掛けられ続けているのに何も注意をされることもなくいきなりテストです。出来ます?其でもこれ以上無い位出来る限りの事をして周りの見ず知らずの保護者達からも「出来てる」と判断されても不合格。完全に大人の利権でしょ!商売でしょ!教育云々無関係でしょ!其でちょっと意見されると我慢しろ、って…此方も馬鹿じゃありません。真摯に仕事しろ!

我慢する必要ありません。辞めましょう。そんなスイミングは潰れるべきです。

ただ、その良くない指導で合格するほうがおかしいのでは?というのが、私が書きたかったことでもあります。ちゃんとした指導ができていないのに合格するということは、「合格させておけば保護者は文句言わないだろう」ということになりますよね。

もちろんそういうことじゃなくて、ちゃんとした指導を!ということなのですが、残念ながら、それらをキチンと指導できるコーチと、そのコーチを指導できる上司は、そのスイミングにはいないでしょうね。残念ですが・・・

 

普通に保護者と子供に対して、マインドセットできてないだけでしょ

仰るとおりです。ただ、保護者にも考え方の違いがあり、その考え方の違いを含めて対応できる人材の育成は、かなり大変だと思うのですが・・・そうでもないですか?

 

長い目でって……。別に水泳選手目指してるわけでもなく、楽しく水泳できればと思ってるのですが、杓子定規な判断と指導でやる気を削がれてしまいます。

3歳から小学6年生まで続けるとして9年間。その間にスイスイ進むときもあれば、停滞するときもある、というつもりで書いたので、その9年自体にズレがあるのであれば、なんとも言いようがありません。

あと、そんなスイミングスクールには、とっととおさらばすることをオススメします。

 

半年、一年って・・。指導力不足を猛省していただきたい。また、選手コースでもないのに足が少し下がってるからと半年と不合格にされたら子どものモチベーションが下がり辞めたがります。ただ、泳げるようになって欲しいだけなので、スモールステップ過ぎで厳しすぎる○○マンに通うのは考えたほうがいいです。他の水泳教室なら一年あればクロール25メートル泳げるようになってます。選手目指す人には良いかもしれませんが、そうでない人には親子共に耐え難い苦痛です。

確かに指導力不足です。ただ、コーチが出来ていないと判断しているのに、合格させるほうが不味いのでは?という考え方もあります。

ただ、自分はイ〇〇ンの関係者でもないですし、〇ト〇ンの肩を持つつもりもサラサラございませんが、他の水泳教室で一年あればクロール25メートル泳げるようになるけれど、そこには「とりあえず」とか「不恰好だけど」というオマケが付いてくることがあるかも?ということです。

ただ泳げるようになって欲しいだけで、親子共に耐え難い苦痛なのであれば、とっとと辞めて他のスイミングに移籍するべきです。

 

「何でもかんでも「辞めてしまえ!」では問題解決にならない!」と、さらに火に油を注いだかもしれませんが、今の自分で考えられることは、それしかありません。

スイミングスクールのコーチを長年やっている人間としては、指導力不足を解消することが一番の方法だと十分理解していますが、それが簡単でないことも理解しています。

それでも「長い目で見ませんか?」と書いたのは、指導力の無さを棚に上げるつもりではなく、それだけ簡単ではないということなのです。

それを理解して頂けるかはわかりませんが、そういうことです。